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NPO法人 練馬家族会 :: 精神研 都民講座 「統合失調症のリハビリテーションについて」 参加レポート
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■ 精神研 都民講座 「統合失調症のリハビリテーションについて」 参加レポート

2004年10月15日(金)

「薔薇の木に薔薇の花咲く。何事の不思議なけれど。」講演のはじめにこの言葉と真紅のバラが画面一杯に映し出されました。この言葉に先生のメッセージが凝縮されています。
「バラの木にはバラの花が咲きます。ヒマワリの花を咲かせようとしてもだめで、バラの花を綺麗に咲かせる」、つまり「その人の持っているものを最大限に発揮させることがリハビリテーションなのです。」
具体的な例を挙げながら、リハビリの全体像、定義、目標等を質問の時間が無くなるほど熱心に、1時間半に渡って説明してくださいました。

以下に要点をまとめてみました。
1.リハビリテーションの定義
①障害を持った者が②残存機能を最大限に発揮して③地域社会の中で④最大限QOL(生活の質)を高める活動である。
これを補足説明すると、
①:障害者という言葉では、障害のみが前面に出て個人が全部障害であるかのように思われるので、障害を持つ者(person with disabilities)と言う言葉を使う方が良い。
②:生活する状況によって残存機能は変わる。「できないこと」と決めてかからないようにする。例えば、病院の中では必要とされないため測れない能力も、生活してみて能力のあることがわかる。
③:「環境の中の人」(person in environment)と言う見方が必要である。必要なときに病院一時を使うが生活は地域の中でする。これは医療的リハビリとは別に心理的社会的リハビリ(当事者中心主義、完全な情報提供と自己決定、生活技能訓練、援助付き就労等)と位置付けられている。

2.リハビリテーションの全体像
以下のようなリハビリのためのシステム、プログラム等が連携してリハビリの効果をあげる。
①疾病を可能な限りしっかり治す医療、疾病教育(新薬の使用、家族、当事者が病気を分かっているか)
②目標、希望の設定とプログラム作り(結婚したいと言うような具体的な希望があれば、皿洗いなどの家事をするようになるなど)
③家族の役割(病気の理解、正確な知識をもとに支援する)
④専門家によるリハビリ支援(医療中心型が多く、リハビリの専門家は少ないのが現状)
⑤支える社会環境(ネットワーク、チームワーク、制度確立、資金を指す)
3.リハビリテーションの目標
「機能回復を限界までして、そこからリハビリが始まり、QOL(生活の質)とリカバリーが目標になる」(リカバリーとは病や障害で失ったものを回復すること)
「機能障害は残っても自尊心を持った生活、人生を獲得できる」ので、そういう希望を失わず自覚させていくのがリハビリである。
「後遺症として残った障害によって、リハビリの目標も違うのであるからそれぞれに合ったリハビリが必要」である。(例えば誰もが同じように皮細工をするというのは適切ではない)
機能障害として良く知られている認知障害について
認知行動とは、目や耳などから取り入れた情報を、自分の知識に照らし合わせ手足の動きなどで行動を起こすことであるが、認知障害とはここに障害が起きることである。雑音の中から聞きたい音を拾う機能に起きるフィルター障害、状況に合わせた判断がうまくできない状況認知の障害、手順の障害などいろいろある。
「身障者にとって車椅子にあたるもの」は、認知障害にとっては「きちんと説明してあげること」である。
残存能力を最大限に発揮するためには以下の点に注意
・作業の分割
・処理能力の範囲内に
・理解しやすい状況を作る 
・ストレスを減らす
・失敗から学べないので(失敗しても同じことをする)、どうしたら良くなるかを一緒に考える。

4.リハビリテーションの段階
適切な時期に適切な援助を与える。
Ⅰ期 疾病回復支援
   退院直後からの脳の休息、回復、病院のデイケアなど
Ⅱ期 能力障害改善
   基本的能力(体力)、対人関係、社会的能力などをトレーニングできるリハビリ施設(日本には少ない。中部,多摩センター等)
Ⅲ期 生活維持支援
   地域支援生活センター、住居サービス、デイケア等の各種トレーニングができる施設
Ⅲ期は、前述の「2.リハビリの全体像」における⑤社会環境に、また、「3.リハビリの目標」にも関連すると思います。私は、このような作業所と就労との中間施設がほとんどない現状を何とかしたいと思いました。

これが私の理解した講演の概略です。

この講演の中で先生は、リハビリの目標に何度か触れられ、「リハビリは人生ではない。人生のためにリハビリがあるのだ。」例えば、「30代の人で、結婚、就労、一人暮しが当たり前ならその当たり前の生活を目標にしよう。」言い換えれば、「時代や文化に合った当たり前の生活を目標にしよう。」と強調されていました。私は勇気付けられましたが、また、「バラの木に綺麗なバラを咲かせる」そのために私は何をしたら良いのかと考えさせられもしました。
野中先生はリハビリテーション学の第一人者だそうです。講演の内容は中央法規出版の「精神障害リハビリテーション」に詳しく書かれているとの事です。  (会員 依田さん)

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