■ NPO法 人練馬家族会主催 市民精神病フォーラムVol.1 報告
2005年7月9日(土)13:30〜16:30 ホサナショップホール
テーマ:クリニックから見た精神医療最前線
講師:大泉金杉クリニック院長 金杉和夫医師
梅雨明け間近な蒸し暑い日中にも係わらず、記念すべきNPO法人練馬家族会主催第1回講演会は、関係各機関・家族・当事者の方々の参加がありました。当日の司会は、家族会の山田が担当しました。
10分遅れて、司会より開会宣言があり、その後、理事長の橋本から、本日の講演にあたっての簡単な挨拶がありました。金杉医師の略歴紹介後、講師のお話が始まりました。
●開業以前から開業の経緯まで
先ず、クリニック開業以前に、先生が勤務された病院や係わってきた精神保健福祉関連の諸団体の紹介がありました。そういった経緯の中、住んでいる地域で治療することを原則にして、大都市近郊の住宅地にデイケア併設型(ナイトケア・心理カウンセリング・精神科訪問看護も実施)のクリニックを、1998年4月に開業されました。
●地域重視の診療
クリニックは半径2〜3km、人口15〜20万人を診療圏内とする、精神病院や精神保健福祉関連の施設を含めた8地域からの患者が多いということを、資料を指し示しながら説明されました。それによりますと、クリニックがある東大泉地区からの患者数は全体の60%を占め、地域医療の実態をナマの数字で感じることができ、また、このような診療体制のクリニックは、練馬区には大泉金杉クリニックのみという現状を考えると、患者やその家族が安心感を得るためには、こういったクリニックが各地域ごとに必要だと思いました。
また、先生は、近所の患者を優先させ、遠くから来る患者には近所の病院を紹介するそうです。良い病院という噂を聞いて、時間をかけて通院する患者の話しもある中、地域医療を大切にする先生の心意気を感じました。
●外来診療の特徴
予約制で、できるだけ患者を待たせない工夫をされています。また、初診の際には、充分に時間をかけて(1時間30分〜2時間)患者と話し合われるということです。大病院での診察が、3時間待って3分診療という実態を知っているため、心のこもった診察体制に驚きました。
●受診者と診断名
さて、クリニック受診者の診断名の半分近くは神経症で、次は気分障害となります。逆に、大病院で多い、統合失調症や認知症は少ないということも、資料を示しながら話されました。精神科クリニックは、気軽に行くことができる「心のかかりつけ医」という印象を持ちました。こちらでは、アルコール依存症も診療されています。
●デイケアや訪問看護の利用者
デイケア参加者は、アルコール依存症・統合失調症・欝病が多くなっています。年代別では、メンタルな病気では20・30代が多く、アルコール依存症では、50・60代となります。発症年齢との関係もあるのかなと考えると、とても興味あるお話でした。訪問看護利用者の数は少ないということですが、傾向としては、比較的高齢者が多いようです。精神症状がひどく外に出られない、母子世帯で親が病気になったなどの理由で利用することもあるようです。
●地域での連携
金杉先生は、診療のみに留まらず、福祉事務所嘱託医や生活支援センターを作る会等でもパワーを発揮され、地域とのネットワーク作りも大切にされています。
●障害者自立支援法案について
最後に、この法案についても言及されました。財政破綻の埋め合わせにされてるのは困ったことで、問題の一つとして、精神保健の予防医療の切り捨てがある、と話されました。精神障害者の家族としては、金銭的負担ばかり考えていましたが、医師の立場からの貴重な意見を聞くことができました。
●質問タイム
講演終了後、参加者に質問をカードに記載してもらい、先生から回答をいただきました。いくつか紹介しましょう。
Qデイケアスタッフの資格は?
A看護師、PSW、作業療法士、臨床心理士がいます。
Q患者のデイケア参加頻度やその方法は?
A自由にやらせているので、毎日の人もいれば週1回という人もいます。方法は1グループ10数人くらいで、スタッフは4〜5人ついています。
Q社会参加できない当事者が、それを可能にするような方法があるでしょうか?
Aコーディネイトする人を利用したいが、練馬区には対応できるスタッフが少ないようです。家族会が、こういった問題について行政と交渉することを望んでいます。
金杉先生から練馬家族会に対しての、貴重な提言もいただけた、大変有意義な講演会でした。