■ 練馬家族会主催 第7回講演会 報告
2005年2月18日(金)13:30〜16:15
石神井公園区民交流センター2階 大会議室
● 大泉病院の紹介
先ず、片山医師が勤務されている大泉病院の簡単な紹介があった。今年で設立50年になり、年間の入院患者は延べ700名ほどで、退院数も同様だということだ。退院促進をしている病院だという印象を受けた。
● ICD-10の分類について
いよいよ本題へと入る。先ず、WHO(世界保健機関)が作成したICD-10の項目の説明があった。ICD-10とは精神および行動の障害が10項目(F0〜F9)に分類され、その各項目について紹介された。精神疾患の症状が多岐に渡っていることを知り驚いた。
● 統合失調症
精神疾患の代表的な病である統合失調症について話が展開した。家族会のメンバー、特に古くからの会員は、この病については周知のことだが、3分の2の一般の参加者にとっては、おそらく良い勉強になったことだろう。また、大泉病院デイケア科の通所者からとったアンケート結果は大変参考になった。特に「親の過干渉はイヤ」「病気になったことを責めないで」等の声は、家族としては身に染みるものがあった。親亡き後を心配する前に、家族が反省する部分も大いにあるように感じた。
● 気分障害
うつ病
10分の休憩後、気分障害の代表的疾患であるうつ病が紹介された。先ず、気分障害は世界人口の3%の人が罹患しているという話をされ、身近な病気であるため、何時その病に罹ってもおかしくないと感じた。
うつ病は罹患しても分からない人が大部分である。すなわち、身体症状は訴えても精神症状を訴えないために、不調の原因が分からず、何カ所も病院を回ることになり、重症化してしまう。うつ病は、最初から精神病院で治療すれば完治する可能性の高い病気であるので、偏見を持たずに精神病院の門を叩いて欲しいということだ。また、バブル後の自殺者は年間3万人にも上り、そのうちの半数はうつ病が原因ではないかということで、厚労省と日本医師会では「自殺予防マニュアル」を開業医へ配布しているということが、その本を示されながら紹介された。精神科医師だけでは対応できない状況、そして、自殺者が多いことは日本の経済にも影響するのではないかという懸念もあり、その対策は急務であると感じた。うつ病になりやすい性格や治療方法の紹介(薬物治療と認知療法)、そして医師からうつ病患者への9つのお願い項目も示され、目で見えない傷の治療をする医師の奮闘を垣間見ることができた。
躁うつ病
この病は気分の高揚と低下を繰り返し、男女ともに平均発症率は20歳で、発症率も男女共に同率であるのが特徴だということだ。加齢に伴って、躁とうつを繰り返す間隔が短くなるということだが、聞いているだけでも疲れてしまう。入退院を繰り返していた人が、薬物療法でここ何年も入院をしていない話が紹介された。
● 神経症性障害
パニック障害
驚いたことに、耳鼻科・神経内科受診者の10〜30%、循環器科受診者60%がこの病気であることが数字で示された。その症状が耳鳴りや心臓がドキドキするなどであるため、まさかパニック発作?とは思えず、精神科を受診しないようだ。そう考えると、この講演を聴けたことで、もし特定な場所で同様な症状が発作的に起こるのであれば、早期発見早期治療の道が開けたことになる。この病気は薬物療法と専門的心理療法の2本立てで行い、片山医師が実際に行った行動療法が紹介された。心の病気は、信頼できる医師との出会いでも治すことができると感じた。
外傷後ストレス障害(PTSD)
この用語は日常でも頻繁に使われるようになり、身近な心の病と言えるようだ。この病気が認知されたのはベトナム戦争後だということだが、きっと、昔からあったのではないかと、私は思っている。確立された治療方法はないが、症例の約半分は3ヶ月以内に完全回復するということだ。ただし、再発する可能性も高く、早期の治療方法の確立を望んでしまう。
● 成人の人格及び行動の障害
境界性人格障害
有病者の75%が女性である。また、有病率は一般人口の2%という数字が示され、これも身近な心の病だということを改めて認識した。リストカットを繰り返す人のほとんどは、人格障害であると話され、治療方法は心理療法が中心で、治るというよりも精神的にひとまわり成長してもらうイメージだということである。薬では良くならない心の病気もあることを知り、人間の心とは不可解であることを再認識した。
病的賭博
あまり聞くことのない病名なのだが、成人の0.4%〜3.4%の有病率があるそうだ。特徴的なこととして、男性は青年期早期、女性は人生後半に始まるということで、文化や社会の病気とも言えるようである。本人に危機感があれば治療できる病であるということからも、生活習慣病と共通したものがあると感じた。
● まとめ
心の病を広く浅く、そして駆け足での講演会だったが、現場の医師からの話は臨場感があった。自分に心の病の兆候があったら、迷わず、精神病院へ足を向けたいと思う。
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