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NPO法人 練馬家族会 :: 統合失調症・予後についての一考察
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■ 統合失調症・予後についての一考察

▼ 序
近年、専門家は精神病の原因について、「親の育て方が悪かったのではない」という捉え方をしています。これは、当事者を抱える家族の2次ストレスを軽減するための、価値ある社会的なケアだと筆者は考えます。
しかしながら、発症に至るまでの調査というものが事実上不可能であるため、それを証明する具体的なものは提示されていません。そこで筆者は、予後において、逆の仮説を立てながら、経緯を見守っています。

▼ 仮説
筆者が家族会活動の中で見聞きした事例を分析した結果、旅立ちの病と言われる精神病の発症原因は、医学的なことの他に、親の関与にも少しは原因があるのではないか、という懸念を抱きました。幸いなことに、筆者は当事者の親ではなく、兄弟という立場ですから、ここは冷静に考えることができました。
そこで、「親は悪くない云々」というのは単なる方便で、実際はその逆ではないか、という仮説が浮かびました。しかしながら、前述のように、発症前のことについて言及することは難しいですから、予後の親の係わり方と回復の度合いについて、同様の仮説を立てました。
その仮説の証明のためには実験が必要です。次に実験手段を述べます。

▼ 実験方法
①まず、当事者を親から離れた環境に移す。
②親には、当事者に関与しないようにしてもらう。
③時系列で、当事者の変化を見る。つまり、親から離れる前とどのように変わったかを確認する。

▼ 実験結果(経緯)
当事者を親から引き離すことや、親に承諾を得ることに、苦労しました。親亡き後の当事者や家族のために必要なことだからと、まず親を説得し、次に親から当事者に説得をしてもらいました。これは、我が子がかわいい親にしてみれば断腸の思いだったでしょう。
親から引き離して、先ず、6ヶ月の入院の後、なんとか退院し、病院直結の生活訓練施設で、現在1年以上過ごしています。生活訓練施設にお世話になりながらも、(この病気の特徴ですが、)責任意識ゼロでスタッフに迷惑を掛けまくっていますが、施設スタッフと協議を重ね、こちらがどういう意図でお預けしているかをご理解いただき、プロとしての使命達成の約束を取り付けました。
この当事者は、一般的な症状ですが、金銭管理が全くできません。在宅であれば、無駄遣いをしても不足した金銭を、親が無条件で渡してしまうでしょう。これについても、訓練施設スタッフの理解を得て、出所までになんとか生活費の管理ができるように訓練することを希望しました。ですから、小遣い・仕送りは家族からは一切行いません。当事者の年金で全て賄うわけです。
肝心の経過ですが、親元にいた時よりも、遥かに他人への依存が少なくなったように感じます。これは、君はもう帰る家は無いのだよ、と何度もやさしく諭したからでしょう。
以前は、無理して短期の就労を繰り返していましたが、今では、当事者は自身の無力さを理解し、永続的な就職ができないことを分かったようです。親が子の能力を無視して、就労を第一に考えるような風潮を感じますが、その前に自立(自活)というハードルを越えさせなければならないと、筆者は考えています。
実験が失敗している事例も報告しておきましょう。筆者夫婦が知らない間に、当事者は何度か実家に外泊をしています。その際に、金銭をねだることを親が許してしまったのを、後から知りました。訓練しているはずの金銭管理のスキルアップが全く見られないことを不思議に思っていましたが、原因は親でした。
まだまだ、実験中ではありますし、サンプル数がたったの1ですが、我が仮説の証明に対して、十分な確証を得られるところまで来ています。

▼ 考察
病気であるかないかには係らず、親が、30〜40代の子供を手元に無条件で置いておくのは社会的に見ておかしい、と筆者は考えます。多くの場合、親離れできない子供と、子離れできない親をそこに見ることができるからです。現状を継続するかぎり、今は40歳でも、親が死ぬときは60歳以上になります。
こういう一般的ではない状況を鑑み、筆者は仮説を立てて実験に及びました。また、これは親亡き後に残される、兄弟家族としての切迫した保険行為でもあります。
心の病ではなく、身体の病であれば、親は子の身体の治療を心掛けるはずです。子は心の病なのに、心の治療を、親はなぜ行わないのでしょうか。現状、投薬が絶対の治療法であることは事実ですが、それは身体の治療であって、心の治療ではありません。
本件は、実験例が1件であり、仮説の完全な証明にはなりませんが、親との関係をうまく遮断して自我を目覚めさせるという当初の目的は、ある程度達せられています。これは、筆者の考える「心の治療」です。
家族会で事例を見聞きするたびに、考えさせられる構図があります。優しすぎる片親と、親に対してしか自我を見せられない子供……この構図をなんとか変えて行くことこそ、根本的な「心の治療」の第一歩だと、筆者は考察の最後に述べさせていただきます。
実験例を増やし、さらなる証明に協力してください。かわいい我が子と、明日の家族のために、親ライオンの気持ちになって、あなたも試してみませんか。  

(編集部 長谷川)

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