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NPO法人 練馬家族会 :: 世界脳週間講演会「脳と心—記憶の不思議」聴講レポート
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■ 世界脳週間講演会「脳と心—記憶の不思議」聴講レポート

2005年3月11日(金)14:00〜16:00
津田ホール(千駄ケ谷)

「世界脳週間」とは

その発祥はアメリカの神経学会が中心となって、1992年から毎年3月に「脳週間」を設け、講演などを中心に公開行事を行ってきました。1997年からヨーロッパでも「脳週間」が実施され、1999年からこの両者が連携し「脳週間」とし、2000年からは「世界脳週間」と銘打って世界的な規模で行事が行われています。
日本の場合は
その意義に賛同し、「NPO法人 脳の世紀推進会議」が中心となって2000年から各種行事が行われています。脳科学に興味を持ってもらい、次世代を担う研究者の育成に力を入れている高校生向けの講演会と、啓発のための一般向けの講演会も行っていますが、比重としては前者が多くを占めているようです。

この講演の主催及びテーマ

財団法人 東京都医学研究機構の研究機関である、都精神医学総合研究所及び都神経科学総合研究所が主体となっているため、司会者と講師の内2名の方々は上記の機関に属されています。ですから、現在も継続して研究されている各分野の中間発表的な色合いも強く、一般の人には難しい内容でありながらも、興味を持ってもらえそうなことに講義を集約しながら解説されていました。
テーマ別に講師が代わり、次の3つの講演がありました。

講演内容と感想

❶脳をいかに育むか
澤口俊之氏(北海道大学教授)

人間らしさの知能である「HQ」を育むことは、人間性や社会的成功にとって重要であるというのがこの講演の概要でした。
「HQ」とは前頭連合野のことで、額のすぐ内側にあり、大脳の25%を占め、大きさはサルの5倍ほどで、将来へ向けた展望や夢・好奇心・主体性・理性・問題解決能力などの高次な脳機能の役割を担っています。8歳までにHQをしっかりと育むと社会的成功を納める確立が高くなるということですが、成人がHQを伸ばす方法として「社会と係わる」「恋をする」「芸術的なことをする」「手を使う」「議論をする」等が挙げられました。また、高齢になってからも伸びる能力として、知識や経験を基に複雑なことをまとめる能力(結晶性能力)ということですから、HQを常に伸ばす努力を怠ってはいけないようです。
知能指数=IQは知っていましたが、HQ(PQとも呼ばれています)の存在を知ったことは大きな収穫でした。近年、ニートと呼ばれる無気力な若者が増えていることについて、HQが関係しているのではないかと氏は仮定しています。すなわち、HQが豊かな人間になるには、育つ環境が大切だと力説されていました。

❷脳の老化と遺伝子
齋藤実氏(都神経科学総合研究所)

加齢による記憶力低下のメカニズムを、遺伝子レベルで解明しているのが氏の研究テーマです。その実験のために、ショウジョウバエを使っていますが、驚いたことに、このハエと人間の記憶の遺伝子は似ているということですので、今後はハエを見る目も変わりそうです。
記憶力低下の遺伝子は、ありそうだ、ということでしたが、今後、それが発見された暁には、脳の老化を防ぐ薬品が開発できるでしょう。また、身体の老化を防ぐために必要なこととして「カロリー制限をする」ことが必要だそうですが、強いカロリー制限は記憶力の低下を促すそうですから、必ずしも脳と身体は同期するものではないようです。
さて、赤ワインに含まれる「ポリフェノール」が老化抑制遺伝子の働きを助けるそうですが、アルコール依存症になるくらい飲まないとダメだそうです。老化抑制の薬が手に入る日も近いと話されていましたので、社会参加できる高齢者が増えることが期待されそうです。

❸災害・事件・事故によるトラウマ記憶と心の反応
飛鳥井望氏(都精神医学総合研究所)

2月の講演会でも話されたPTSD(パニック障害/いわゆるトラウマ)は「心のケガ」とも言われています。深刻な被害を受けた人の中でも、人間からの被害はPTSDの有病率が高いということです。また、強い恐怖や身体的ストレスによって脳内物質が分泌され、そのことで「扁桃体」という部分が活性化され、記憶の蓄積が昂進することが解明されていますので、服薬での治療方法が確立されたのかと期待したのですが、認知行動療法で治療は行われています。

「脳と心」の不思議は、まだまだ解明の余地があり過ぎる、というのが3つの講演を聞いての率直な感想です。

(編集部 高田)

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